間違いだらけの疲労の常識

2017年05月16日 公開

梶本修身(医学博士)

若い頃のようにバリバリ働こうとしても身体がついてこない、昨日の疲れを残したまま出勤する日が増えた……。このしつこい疲れを何とかしたいビジネスマンは少なくないだろう。だが、疲れとはそもそも何だろうか。そこで、日本の疲労研究の第一人者である梶本修身氏に、疲れの正体とともに、疲労を改善する生活習慣についてうかがった。

 

あなたを苦しめる「疲れ」の正体

40代は、体力の衰えを実感する年代。「しっかり寝たはずなのに、疲れが取れない」などと感じる方も多いと思います。一体どうすれば、このしつこい疲労を取ることができるのか。その方法を知るためには、そもそも疲労とは何かを理解しておく必要があります。疲労の正体がわからなければ、正しい休息もできないからです。

日本疲労学会の定義によれば、疲労とは「運動などの身体的な作業による負荷、あるいはデスクワークなど精神的な作業による負荷を与えられたときにみられる作業効率の低下現象」とされています。

では、なぜこの低下現象が起こるのか。「仕事や運動でエネルギーを消費するから」と思っている人も多いようですが、実際には、エネルギーの枯渇で疲労が生じることはめったにありません。身体作業による疲労も、精神作業による疲労も、すべて「脳の自律神経の疲れ」であることが、最近の研究で明らかになっているのです。

自律神経とは、呼吸や心拍数、消化吸収、血液循環などの生体機能を調整している神経です。自律神経には、交感神経と副交感神経の2つの系統があり、交感神経は身体を活動的にする働きがある一方、副交感神経は身体を休息させる働きがあります。

デスクワークなど集中力を要する仕事で精神的ストレスがかかると、交感神経が高ぶり、自律神経に負担がかかります。これが精神作業における疲労です。また、運動による疲労は、以前は筋肉疲労と考えられていましたが、筋肉は丈夫なので、ダメージを受けることはあまりありません。むしろ、運動によって心拍や呼吸、体温を調整する自律神経への負荷が増大することが、運動疲労の正体なのです。

自律神経が疲れるとはどういうことか、もう少し詳しく説明しましょう。自律神経の細胞を酷使すると、たくさんの酸素を必要とします。細胞が酸素を消費する過程で活性酸素が発生し、これが自律神経の細胞自体を錆びさせてしまうのです。細胞が錆びれば自律神経の働きも低下し、仕事の効率も下がります。つまり疲労とは、「自律神経の機能低下」であり、そしてその原因は活性酸素なのです。

徹夜明けで疲れた状態を思い起こしてみてください。頭が重い、くらくらする、耳が遠い、ろれつが回らない、肩が凝る、目がしょぼしょぼする……。これらはすべて自律神経失調症の症状です。私たちは普段の慢性的な疲労でも、自律神経失調症の症状を呈していることを理解していただきたいと思います。

THE21  2017年5月より

取材構成 前田はるみ