ほめ方で脳は変わる? ― 成長マインドセットと神経回路 ―

ほめ方は「気分」だけでなく、脳の回路そのものに影響します。


ほめているのに、なぜか伸び悩む

「すごいね」
「さすがだね」
「頭がいいね」

子どもを励ましたい一心で、私たちはたくさんの賞賛を送ります。
けれども時に、こんなことが起きます。

・失敗を極端に怖がる
・難しい挑戦を避ける
・「できない自分」を強く否定する

十分にほめてきたはずなのに、なぜでしょうか。

その鍵は、「能力をどう意味づけたか」にあります。


「結果ほめ」と「過程ほめ」

心理学ではよく、次のような違いが指摘されます。

● 結果や能力をほめる

「100点すごいね」
「才能があるね」

→ 能力は“もともとあるもの”という印象を強めやすい

● 過程や努力をほめる

「よく考えたね」
「工夫していたね」
「あきらめなかったね」

→ 能力は“伸ばせるもの”という認識につながりやすい

この違いは、単なる言い回しの問題ではありません。
脳の学習回路の使い方そのものに影響します。


成長マインドセットと脳の可塑性

「能力は固定されている」という考え方を
固定マインドセット。

「能力は努力や工夫によって伸びる」という考え方を
成長マインドセットと呼びます。

脳科学の観点から見ると、
成長マインドセットは、脳の**可塑性(変わる力)**を前提にした姿勢です。

前頭前野は、挑戦・修正・再試行といった高次の思考を担います。
過程に目を向けるフィードバックは、この領域の活動を促しやすいと考えられています。

一方で、能力そのものを評価の中心に置くと、

「失敗=能力の否定」

という構図が生まれやすくなります。
すると防御反応が強まり、挑戦よりも“安全”を選ぶ傾向が高まります。


前回とのつながり:失敗の意味づけ

前回お伝えした通り、
失敗は脳にとって学習のチャンスです。

しかし、周囲の言葉がその意味を変えてしまいます。

「やっぱり向いていないね」
「もっとできると思ったのに」

こうした言葉は、失敗を“能力の証明”に変えてしまいます。

一方で、

「いい挑戦だったね」
「次はどう工夫してみる?」

という問いかけは、失敗を“成長の材料”に変えます。

同じ出来事でも、
ことばが脳の解釈を方向づけます。


ことば → 感情 → 神経回路

私たちの言葉は、まず感情に影響を与えます。
感情は、注意の向きや思考の幅を左右します。
そして繰り返される経験が、神経回路を強化していきます。

評価の中心が「能力」なのか
それとも「過程」なのか。

この違いは、

・挑戦を選ぶ脳
・安全を選ぶ脳

どちらの回路を強めるかに関わってきます。


大切なのは、特別なテクニックではありません。

● 観察を伝える
「昨日より集中していたね」

● プロセスを言語化する
「どうやって考えたの?」

● 成長の連続性を示す
「前はここで止まっていたね。今回は進めたね」

能力を断定するよりも、
“変化”や“過程”を共有する。

それだけで、相手の自己認識は変わります。


まとめ

ほめ方は、単なるコミュニケーションではありません。

✔ 失敗の意味を決め
✔ 挑戦への姿勢を育て
✔ 神経回路の使い方を方向づける

私たちのことばは、
「これから」をつくります。

「あなたは伸びる存在だよ」

このメッセージが、
脳の中に静かに根を張っていきます。

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